TOKYO FOOTBALL STORY

TOKYO FOOTBALL STORY
堀田 稜 / 東京海上FC(東京1部)

TOKYO FOOTBALL STORY 2020

堀田 稜/東京海上FC

「社会人サッカーを続ける理由」

東京都社会人サッカーリーグ1部の東京海上FCに所属するMF堀田稜。日々、忙しい仕事をこなしながらも社会人サッカーを続ける理由。厳しい環境に自らの身を置いて、求めているものは何か。今後の目標などを聞いた。
(※インタビューは2020年9月に実施)

INTERVIEW

プレッシャーが自分を律し、歓喜の瞬間を大きくする。

Q.仕事をしながら真剣にサッカーを続けていくことは大変だと思います。それでも続けている理由、社会人サッカーの魅力とは。

「続けている理由は二つあって、一つは純粋にサッカーが好きということ。勝利につながる1点が入った時の喜び、心から声を張り上げる歓喜の瞬間というのは非日常的で、仕事やプライベートではなかなか体験できないものがあります。その瞬間のために平日も身体にムチを打って走っているし、仲間とも議論をする。そしてもう一つは会社のサッカー部のこだわりでもあるが、仕事もサッカーも一流を目指すということ。僕らは同じ企業に身を置く部員が揃っているので、サッカーを通じて切磋琢磨して会社に貢献する。ひいては社会にとって有意義な人間になり、世の中にも貢献していくこと。社会人としての成長を求めてやっています」

Q.今の東京1部の社会人選手たちは多忙な仕事をこなして、しっかりと収入を得て、サッカーも真剣に頑張っている選手が多い。自分自身が厳しいと思うゾーンに身を置くことを心地よく感じているのか。

「僕自身は仮に仕事の時間が少なくてサッカーにたくさん打ち込める、逆にサッカーはやらずに仕事だけに打ち込めるというような状態は、もしかしたら心地よく感じるかもしれないが、それでは自分自身の成長につながらないし、充実感を得られないと思っています。仕事は仕事で大変なプレッシャーの中にあって、一方でサッカーもリーグ戦で負けが許されないプレッシャーの中で戦っている。でもそのプレッシャーがあるからこそ、自分を律することができるし、歓喜の瞬間がより大きなものになる。正直、どちらも楽ではないですが、その高い緊張感の中にいるからこそ続けられると思っています。

 平日から取り組むことが多ければ多いほど、その成果に対するこだわりは高まるし、『俺はこれだけやってきたんだから絶対に成果を挙げたい』と、結果へのこだわりにつながっていきます。就業後のサッカーのトレーニング、勉強、自らを高めることに時間を費やしているからこそ、その日々の取り組みが正しいと証明するためにも試合の結果はもちろん仕事においても結果を出したい。そういう循環なのかなと思います」

Q.社会人選手にとっての公式戦1試合の中には、実はサッカー以外の要素もたくさんピッチに詰まって、ぶつけ合っている。

「ひとつの勝利が意味するものというのは人それぞれ違うと思いますし、もし、サッカーだけをやっていたらあのトレーニング、あの戦術が・・という話になります。でも、社会人サッカーにおける勝利って単純な勝利だけでなく、仕事をギリギリまで頑張ったとか、俺はここまで仕事とサッカーを取り組めたとか、そういう部分も付いてくるのかなと思います」

今まではサッカーが僕のアイデンティティー。それを変えていきたい。

Q.プロを目指していた堀田さんにとって東京1部というのはアマチュアのリーグでカテゴリーとしては随分と低い。それでも刺激的であり、本気で向き合えるリーグか。

「これまでの社会人サッカーはどちらかというと、サッカーを通じて得られる人間としての成長的な部分に目を向けていたところがありました。でも、今は現役の大学サッカー部も加わり、Jリーグを目指すチームもいて、勝利至上主義というか、仕事のあとに走って気持ちで勝つというような社会人サッカーとしての美学では勝てなくなってきています。そういった意味では、もう一度サッカーで勝つという純粋なところと向き合わないといけないし、僕らサラリーマンフットボーラーがもう一つレベルアップしなくてはいけない。でも、僕自身はそれがすごく刺激的で、どうやったら体力や練習量の差を埋められるか、そのためのポジショニングやパワーの使いどころを考えてここからさらにサッカーをうまくなるか。また、学生やJリーグを目指すクラブに対してどうやって勝つか、個性的なチームにどう対峙するかというプロセスを考える、そういったことを楽しみながらやれています」

Q.少しだけ仕事について。今の仕事のやりがいはどんなところに感じているか。

「僕自身はずっとサッカーにしか打ち込んでこなくて、もちろん大学で勉強はしましたが、もっと世の中のことを幅広く知りたいという想いもあって今の会社に就職しました。仕事の中で様々な業種のお客さんや規模を問わない会社との接点があり、その中で色々な経験であったり、刺激を受け、充実した日々を送れています。職業柄の話でいうと、自然災害で皆さんが困っている時に力になれる、人が助けを必要としている時に力になれるというのは使命感、やりがいを感じています」

Q.堀田さんは大学までサッカーを続け、その後、就職して社会人サッカーを始めた。今の東京1部には現役の大学生も多いが、これから社会に出る彼らに社会人サッカーの魅力を伝えるとしたら。

「僕は大学を卒業する時にサッカーはもう十分にやったし、これ以上はサッカーに打ち込むことはできない、ここからは社会に出てサッカーで学んだことを仕事に活かせればと思っていました。でも、ここまで4年間社会人サッカーを続けてみて、サッカーってこういう面白さもあるんだとか、実はチームや組織において信頼を得る、周りを活かして自分も活きるとか、逆にサッカーから仕事のことを学べることも多かったです。何よりサッカーの楽しさを改めて学ぶ機会がたくさんあると思います」

Q.最後に今後も仕事とサッカーを両立してやっていく中で、目標やビジョンは。

「両方やっていきたいと思うし、可能な限り大きな成果を追い求めていきたいと思います。ただ、これからのメインは仕事・サラリーマンになるので、『サッカーがうまいやつが仕事もできる』ではなくて、それを逆に持っていきたい。仕事であれだけ成果を出しているビジネスマンが実はサッカーもこれだけできる。今の僕はずっとサッカーをやってきて、サッカーが僕のアイデンティティーになっています。それを変えていきたい。

 プロを諦めて社会人になって最初に思ったのは、プロになった仲間に『俺は今こういう仕事で頑張っている』と胸を張って言えるようになること。社会人サッカーで活躍する場があるのはすごくありがたいことですが、一方でやはりビジネスマンとしての体裁にもこだわっていきたい。もちろんサッカーに打ち込んできた僕が結果を出すということは人並みの努力じゃ足りないことはわかっています。でも、そういう中でも努力を続けて、仕事もサッカーも両方を取りにいきたいと思っています」

PROFILE

堀田 稜 MF/東京海上FC

1994年生まれ。埼玉県出身。浦和レッズユース - 早稲田大学ア式蹴球部。大学卒業後に東京海上日動火災保険に入社し、東京1部の同サッカー部に入部。2017年に得点王、アシスト王をW受賞。2017年から3年連続で東京1部リーグベストイレブンに選出。2017年、2018年には東京都国体選抜チームにも選出。左利きのアタッカーで正確なクロス、シュート、ドリブル突破が武器。

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