TOKYO FOOTBALL STORY

TOKYO FOOTBALL STORY
近藤 洋史 / CERVEZA FC 東京(東京1部)

TOKYO FOOTBALL STORY 2020

近藤 洋史/CERVEZA FC 東京

「プロの道へ進まず、企業へ就職」

東京都社会人サッカーリーグ1部のCERVEZA FC 東京に所属するMF近藤洋史。早稲田大学時代はJリーグクラブからの誘いを受けながらも断りを入れ、企業に就職することを選択。その決断の理由や現在も続けている社会人サッカーの魅力を聞いた。
(※インタビューは2020年10月に実施)

INTERVIEW

プロの世界でやっていけるイメージを持てなかった。

Q.高校時代は名古屋グランパスユースに所属していたが、当時は当然プロになりたいという思いでやっていたのか。

「プロが身近にあったので、気持ちとしてはトップチーム昇格を目指してやっていました。ただ、実際には僕らの代はユースからトップに上がれた選手は一人もいなくて、僕自身も直接『トップに上がれない』と言われたわけではないですが、雰囲気的に難しいだろうなと感じていて、早めに大学進学に向けて動いていました。トップに上がれるか上がれないかギリギリまで判断を待っていると、いざ上がれなかった際に、そのタイミングでは進学できる大学がほとんどないということもあるので、自分は早めに動いていました」

Q.その後は早稲田大学に進み、2年生の時にはインカレ(全日本選手権)で優勝を経験。J2のプロクラブからの誘いもあった。実際に誘いがあったのはいつ頃か。

「誘いがあったのは4年生の4月だったので、かなり早いタイミングでした。それまで僕自身はJリーグのスカウトの方と話をしたこともなかったし、練習参加にも行ったことがなかったので、突然のことで驚きました」

Q.クラブ側から誘われた理由、評価された部分は。

「言われたのは『2年生の頃から試合を見ていて、ずっと注目していた。ぜひ来てもらいたい』ということでした。おそらく技術的には自分の基礎技術を評価されたと思います。あとはメンタル面。自律性だったり、チームを引っ張っていくような人間性の部分を評価してもらえました」

Q.最終的にはプロに進む道を選ばなかった。プロになることを目標にサッカーをやってきていながら、その道へ進まなかったのは。

「自分たちのサッカー部は、通常、3年生の終わりに就職活動を始める人と、就職活動を行わずにプロを目指す人に分かれます。僕の場合は3年生の就職活動が始まる時期になっても、プロのチームとコンタクトを取っているわけではなかったし、その時はすでに就職活動をしていました。子供の頃からずっとサッカーばかりで、サッカー以外の世界をあまり知らなかった自分にとって、色々な会社を見たり、OBの方と話す就職活動というのは、すごく刺激があり、社会に出ていくことの面白さを感じていました。そういったタイミングと重なったことが大きかったです。

 もちろん相当悩みました。練習参加をしてみようとか、もう少し話を聞いてみようとか、色々考えました。ただ、入団する気がないのに練習参加だけするのは失礼だし、そこはきちんと判断したほうがいいという周囲のアドバイスもあり、最終的には練習参加をする前に断りました。スカウトの方も僕が取れないなら次の選手に行くという話だったので、オファーをもらってから1ヶ月ほどで返答をしました」

Q.プロで活躍していくというイメージは描けなかったのか。

「もともと僕は中学、高校と世代別の代表に選ばれるような選手ではなかったですし、大学でもトップと呼ばれるような選手ではなかったです。もちろん僕のような境遇から這い上がっていく選手もいるとは思いますが、自分ではそこまでの自信はなかったです。大学時代にJリーグのクラブと練習試合をしたときにはそれなりに自分のプレーが出来たと思えたこともありましたし、もし、練習参加をしていたら『この中でも全然できる』と思えたかもしれない。ただそれはあくまでも練習試合や練習参加での話で、実際にそのクラブに入団してライバルと日々競争して継続的にスタメンを勝ち取れるか、自分自身でプロの世界で稼いでいけるかというと、自分ではそのイメージが持てなかったです。

 やはりプロになる人ってどんな状況でも『俺は絶対にプロになる』っていうのが頭の中にあると思いますが、僕の場合は、小さい頃から両親に『サッカーと勉強を両立しなさい』ということをよく言われていて、色々なことに興味を持っていたし、サッカーと勉強が自分の中で軸になっていました。むしろ絶対にプロサッカー選手になるというよりかは、サッカー以外の部分にも興味があったし、結局はそれが悩むポイントになり、就職するという選択に至りました」

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今は仕事とサッカーで生活が充実。

Q.大学を卒業して広告代理店に就職。今はどういった部署にいて、どういった時に楽しさ、やりがいを感じているか。

「初任配属はデジタルメディアを扱う部署でした。そこから異動して現在はマーケティング戦略に合わせてメディアをプランニングする部署にいます。自分の知らなかった領域を勉強する楽しさがあり、今ではすっかりその分野の面白さにはまっています。やりがいや喜びを感じるのは大きな案件に携わった時。長いものだと1年くらい前から提案して、採用が決まって、準備を進める。実際にそれが世の中に出たときには喜びを感じています」

Q.就職して6年目。当時、自分が決断した選択を今はどう感じているか。

「どっちが正解かはわからないですが、今は仕事にやりがいも感じているし、週末には真剣勝負のサッカーもあって幸せだなと感じています。すごく生活が充実しています」

Q.大学時代の同期でプロに進んだ近藤貴司選手などは今もJ2で活躍している。

「大宮に移籍して試合にも出て、同期としてすごく誇らしい。それに松澤香輝(徳島)、上形洋介(八戸)も今もプロとしてやっている。彼らの活躍は自分にとってもすごく刺激になっています」

Q.今年は同じ東京1部リーグに母校の早大が加わって、現役のチームと対戦もした(結果は1-1)。特別に何か感じたことはあったか。

「試合会場になった早大の東伏見という場所には様々な思い出があります。試合当日、グラウンドに着いた時にはすでに会場の案内が出ていたり、テントが立っていたり、彼らは試合のアップの準備もすすめていて、相変わらず素晴らしいなと感じました。サッカーに対してもひたむきで、自分たちの頃の『堅守速攻』とはサッカー自体もだいぶ変わっていて、丁寧にボールをつないで、ビルドアップもうまかったです。ただ、試合に関していうと、僕自身は自分が所属していたチームだし、絶対に負けたくないという気持ちでした。現役が相手とはいえ、守りに入って戦うのではなくて、ボールを保持して、前からプレッシャーをかけて、本当にガチンコで戦ってやろうと思っていました。実際、前半はうまく戦えましたが、後半は若干引いて戦う感じになってしまいました。でも、そこも含めてうまく戦えたのかなと思います」

Q.現役の大学生たちに社会人サッカーの魅力を伝えるとしたら。

「おそらく大学で引退する時に、これでサッカーは終わりって思ってしまうかもしれないけど、実際には社会人サッカーというものがあるのでまだまだ続けられるし、終わらない。サッカーを続けることで、仕事がおろそかになるということではないし、仕事もトップを目指すし、サッカーでも上を目指す。そういったさらに難しい環境に挑戦できる機会があるということを伝えたいです。それに自分が今所属しているセルベッサというチームは企業チームではないので、違う会社の人ともつながり、サッカー以外のことでも関われる。そこは大学や企業チームとは違って、色々なコミュニティと触れ合える機会だし、自分自身がより豊かになれる環境かなと思います」

Q.最後に近藤さん自身のここからの目標としては。

「今後は自分自身がサッカーをプレーするだけではなく、仕事の中でもスポーツやサッカーに関われるようにしていくこと。もともとスポーツやサッカーに関わりたくて今の会社に就職したので、サッカーに関われる仕事への比重をどうやって高めていくか、どうすればできるかを考えていきたいと思っています。あとは家庭との両立もテーマです。サッカーに関しては現役でプレー出来る時間もそれほど長くないと思うので、できれば一度は関東リーグに昇格をして、その環境でサッカーと仕事の両立に挑戦してみたいと思います」

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PROFILE

近藤 洋史 MF/CERVEZA FC 東京

1992年生まれ。東京都出身。名古屋グランパスユース - 早稲田大学ア式蹴球部。大学卒業後は広告代理店に入社し、東京1部のCERVEZA FC 東京に入団。視野の広いプレーで味方を動かし、自ら仕掛けて得点も取れる万能なMF。2017年には1部リーグ優勝に貢献し、2015年、2017年、2019年には東京1部ベストイレブンに選出。2015年からは3年連続で東京都国体選抜にも選出。

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