TOKYO FOOTBALL STORY

TOKYO FOOTBALL STORY
小松 聖音 / 東京海上FC(東京1部)

TOKYO FOOTBALL STORY 2022

小松 聖音/東京海上FC

「ここからの復活劇を見てもらえれば」

 東京都社会人サッカーリーグ1部の東京海上FCに所属するMF小松聖音。昨年、左足の膝の手術を行い、長いリハビリを経てようやく復帰したにもかかわらず、今年の開幕戦で今度は右足の前十字靭帯断裂というアクシデントに見舞われた。再び手術、長いリハビリを余儀なくされる中、再起にかける思いを聞いた。
(※インタビューは2022年6月に実施)

INTERVIEW

ようやくの復帰戦で前十字靭帯断裂

Q.今季はケガからようやく復帰して開幕戦を迎えたにもかかわらず、その試合で再び大ケガを負ってしまった。あの瞬間は痛みが一番だったと思うが、それ以外に頭の中を駆け巡ったことは。

「1年前に左足をケガして、そこから手術をして、リハビリをして、ようやくの復帰だったので『またかよ』という思いが頭の中を駆け巡りました。でもあの開幕戦の時は(靭帯が切れる)音までしたので、これはもう絶対ダメだなって自分自身がわかって。結局、前十字靭帯断裂と半月板損傷という診断をくだされて、復帰には10ヵ月から12ヵ月くらい掛かるということでした」

Q.今季はどんな心境、状態で開幕戦を迎えていたのか。

「去年(2021年)の2月に膝の手術をして、そこから約半年後に復帰出来る目処が立ちましたが、コロナの影響もあってチームがリーグ戦を途中辞退することになり、結局去年はほとんど試合に出られないまま1年が終わってしまいました。でも、その分しっかりと身体を作りながら今年のシーズンを迎えることができたので、コンディション的にはかなり良く、自分でも期待が持てる、期待感がある中での開幕戦でした」

Q.今回も仕事を休んで入院して、手術をすることになる。それに長いリハビリも待っている。それでも、もう一度サッカーを頑張ろうと思う理由、ご自身を突き動かしているものは。

「これが22、23歳くらいの脂が乗っている時期にケガをしていたらすごく落ち込んでいたと思います。でも診断を下されたあとは意外と吹っ切れている自分もいて、それはなぜかというと、ここからの復活劇というのはたくさんの人が見てくれているというか、たくさんの人が『あいつまた復活したんだ』って思ってもらえるのかなと思えたからです。これまで8年ほど社会人サッカーをやってきて、国体だったり、都リーグ選抜だったり、色々なことを経験させてもらう中でたくさんの人と知り合い、ケガをした時も本当にたくさんの励ましの連絡をもらえました。そういう意味ではここから自分がもう一度復活することによって受け取ってもらえる印象、『こいつ頑張ってんな』って思ってもらえるものというのは、すごく意味があるんじゃないかなと。それが今は自分の中での原動力になっています」

「プライド」そして「克己心」を持つこと

Q.一昨年までは転勤先の静岡(浜松)からサッカーのために週末だけ東京に通う生活を4年間続けた。その時の生活スタイルは。

「基本的には土曜日の朝5時台の新幹線に乗って、9時過ぎに東京海上の多摩グラウンドに着いて練習。そのまま泊まって日曜日の試合が終わったらすぐに帰って、浜松に着くのがだいたい夜の8時とか、遅い時は10時とかでした。金曜日の夜からは何も予定を入れられなくて、月曜日の朝起きるとめちゃくちゃ身体に疲労が溜まっている。とにかく平日の過ごし方を意識する生活が4年間続いていました」

Q.静岡に転勤が決まった時、一旦サッカーから離れようとは考えなかったのか。

「自分の中ではなかったですね。浜松に行ったのが社会人4年目の時で、その前のシーズンがリーグ戦8位。特に、その一年前はリーグ戦で優勝して、関東大会の準決勝までいってエスペランサに3-4で負けて今年こそは頑張ろうっていう年だったので。それなのに8位で終わってしまい、自分の中ではこのままでは終われないなと思って、まずは1年間やり切ろうと浜松から通い初めました。でも結局翌年は関東大会で準優勝しながら昇格できずまた悔しい思いをして・・・。そういったのが続いていつの間にか4年間が経っていました」

Q.ご自身が社会人サッカーをする上で大切にしていることは。

「一言でいうなら『プライド』かなと思っていて、良くも悪くも社会人は色々な誘惑があると思っています。夜の飲み会もそうですし、もちろん仕事も一生懸命頑張らなくてはいけない、そのあとに走る走らない、トレーニングをするしないというのも自分自身で決めなくてはいけない。そういう意味ではどれだけプライドを持ってやっていけるかがすごく大事だと思っています。今の東京1部は大学生もいればプロを目指すクラブチームもいて、僕らみたいな企業チームはなかなかみんなで揃って練習することもできない。そんな中、社会人サッカーをこれまで背負ってきたという企業チームとしての『プライド』が僕の中にはあって、この東京海上というチームでサッカーをやっていく上ではすごく大切にしています」

Q.仕事とサッカーを両立する上で大切にしていることは。

「うちの村上監督が常々メンバーに言っていることですが、とにかく『克己心』だと。戦っている相手は、目の前の相手でもなく自分自身ということ。それを自分の中で言い聞かせるようにしています。サッカーでいえば先程話したように、走る走らないも自分自身に打ち勝てば走れるし、仕事のメールを1本返す返さないも同じ。そういった一つひとつがサッカーも仕事も同じだと思っていて、そこは監督に出会ってからすごく意識するようになりました」

Q.復帰に向けて今は頭の中でどんなことを考えているか。

「今年は幸い関東大会(関東リーグ参入戦)が例年より遅く、12月に開催されるので、その時に少しでもピッチに立てるように復帰の目処を立ててリハビリしています。チームの今年の目標である『関東昇格』を果たす時に、最後の5分、10分でもチームの助けになるような存在としてピッチに戻りたいと思っています」

Q.そのためにここからやるべきことは。

「二つあって、一つはチームが関東大会に出場するためには東京1部のリーグ戦を勝ち上がらなければいけないので、主将としてチームをマネジメントしていくこと。もう一つはいくら復帰の目処が立ったとはいえ、単にピッチに立つだけでなく、関東大会というレベルの高い相手に通用するようなコンディションまで自分自身を持っていくこと。そういった意味では、今回の開幕戦と同じくらいの高強度のパフォーマンスを12月に発揮できるように、今からしっかりと準備を進めていくことが重要だと思っています」

PROFILE

小松 聖音 MF/東京海上FC

1991年生まれ。北海道出身。札幌光星高校サッカー部 - 早稲田大学ア式蹴球部。
大学卒業後に東京海上日動火災保険に入社し、同サッカー部に入部。2015年から2019年まで5年連続で東京1部リーグベストイレブンに選出されるなど、仕事とサッカーを両立する社会人フットボーラーの看板選手として活躍。2015年、2016年には東京都国体選抜チームにも選出。ポジションは主にボランチで、中盤の底から攻守においてチームを支え、得点・アシストもできる万能型プレーヤー。また所属チームだけでなく、東京都リーグ選抜や東京都国体選抜においても主将を任されるなど、リーダーシップも持ち合わせている。

MOVIE

『復帰に向けて』 60秒 - 東京海上FC 小松聖音

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