堀田 稜／東京海上FC
「サッカーに区切り 次のフィールドへ」
長く東京の社会人サッカーの顔として活躍してきた堀田稜。所属の東京1部・東京海上FCだけでなく、東京都リーグ選抜や東京国体選抜でも活躍し、2022年にはアマチュア最高峰の「JFL」クリアソンで1年間のプレーも経験。2023年に再び東京海上に戻り、1年間プレーしたのちに引退を決め、今後は仕事とサッカーの両立から、ビジネスの世界1本に絞って歩んでいく。引退を決めた理由や社会人サッカーでの学び、今後の目標を聞いた。
JFLから再び東京1部へ「結果は出なかったがやり切れた」
──JFL、クリアソンでの1年間は相当濃いものだったと思うが、そういった環境から再び東京1部の東京海上に戻ってプレーした。改めて社会人サッカーの環境に戻り、熱量の差などは感じたか。
「特に熱量の差は感じなかったし、ネガティブな要素はなかったです。チームもすぐに受け入れてくれたし、部員のみんなもすごく前向きに僕と関わってくれて、そこに対して自分の熱量が落ちるみたいなことは一切なかったです。 ただ、JFLという言ってみればアマチュア最高峰、仕事とサッカーを両立するトップレベルで1年間やらせてもらって戻ってから思ったのは、アマチュア選手がアマチュアとしてやるサッカーの位置づけ、これはクリアソンにいた時もそうでしたが、自分がこの社会人サッカーとどう向きあうのか、そこは改めてすごく考えさせられた1年ではありました。
みんなポジティブな気持ちでサッカーをやるんですけど、やはりそこに結果が伴わないとどうしても苦しい時期が訪れる。どれだけ意欲的に取り組んでも、どれだけ必死に努力しても勝てない。周りのレベルも上がるし、アマチュアとしてやるサッカーの難しさ、もどかしさと向き合った1年だったかなと思います。もちろん単純に結果を振り返れば優勝できず、関東大会にも出場できなかったし、その悔しさもあります。ただ、自分がどれだけサッカーにコミットしたか、頑張ったか、そういった意味では後悔はまったくなく、熱量も変わらず1年間やり切れたと思います」
──今後はどんな目標を掲げて歩んでいくのか。
「冒頭申し上げた通り、大学卒業時点でプロサッカー選手になることをあきらめその道を断ったので、今度はサッカーで成し遂げられなかったことをビジネスの世界で実現する、もっと言えば世界で通用する人間、ビジネスパーソンになることが目標です。今はそれに関われるフィールドを会社に与えてもらっているので、ここにコミットして力をつけて、サッカーに頼らず自分をモチベートして頑張っていきたいと思います」
「このカテゴリはサッカー愛で溢れてる」
──改めて、社会人サッカーをやっていたことが仕事にとってもプラスに働いたことは。
「これからチャレンジする方にも伝えておきたいことですが、自分もこの両立を合計8年やったからこそ今のキャリアのチャンスがあり、ビジネスマンとしてもまだまだですが、成長してこれたと思っています。最初は仕事とサッカー、どちらも真剣にこなすというのが厳しくて、身体づくり、頭の切り替えもうまくいかない。でも経験を積み、仕事に疲れて休みたいところを試合のためにロードワークしに行く、食事の面でもきちんと節制する。こういったセルフコントロール、自分を律することができるようになったことが一番大きいです。これは大学を卒業して仕事だけをやっていたら身についていなかったことだと思います。
それと先ほど言った通り、試合も必ず勝てるばかりではないですし、自分たちがどれだけプランを練っても本番ではまったくうまくいかないことも多々あります。でもそれは仕事も一緒で、自分がうまくいくと思っていたことがうまくいかなかったり、厳しいフィードバックが返ってきたりすることもあります。ただ、そういった時に起きたことを引きずるのではなくて、ここからどうするか、このビハインドの展開の中でどうやってゲームを前向きに進めていくのか。そういったマインドセットはこれからの自分のキャリアにおいても絶対強みになると思います」
──最後に社会人サッカーの魅力は。
「仕事とサッカーのつながりを色々と話しましたが、やはり一番の魅力はこのカテゴリーはサッカーに対する愛で溢れているということ。プロの世界、プロを目指している時はサッカーで成し遂げたい夢があってひたすらやっていると思いますが、この社会人サッカーの世界は言ってみれば趣味の領域。にもかかわらずこれだけの熱量でサッカーに打ち込んでいる人たちがいる。試合に負けて悔し涙を流したり、1点を取ってチームメイトや応援しに来てくれる人と共に心を震わす瞬間がある。これを経験しないのはすごくもったいないと思います。僕自身もそういった意味では純粋にサッカーの魅力というのを今まで以上に深く味わった時間だったと思います。そこに副次的な要素として、自分の人生、自分のキャリアという部分にも必ずいい影響を及ぼしてくれる。それがこの社会人サッカーの魅力です。でも一番は繰り返しにはなりますが、『このカテゴリーはサッカーに対する愛で溢れている』というところが大きいと思います」
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PROFILE
堀田 稜 MF／東京海上FC
1994年生まれ。埼玉県出身。浦和レッズユース － 早稲田大学ア式蹴球部。大学卒業後に東京海上日動火災保険に入社し、東京1部の同サッカー部に入部。2016年から6シーズンプレーしたのち、2022年はJFLのクリアソン新宿に移籍し1年間プレー（※全30試合に出場し2得点を記録）。2023年に再び東京1部の東京海上FCに戻り、同シーズン限りで引退。東京1部では計7シーズンプレーし、得点王1回、アシスト王4回獲得、ベストイレブンには4度選出された。また、東京都国体選抜（成年）には2017年、2018年、2023年に3度選出された。左利きのアタッカーで正確なクロス、シュート、ドリブル突破が武器。
