TOKYO FOOTBALL STORY

TOKYO FOOTBALL STORY
尹 英勝/ZION FC(東京2部)

TOKYO FOOTBALL STORY 2021

尹 英勝/ZION FC

「自分の中では今も引退したまま」

2021年シーズンの東京2部で大活躍を見せたZION FCのFW尹英勝(ユン ヨンスン)。開幕から7試合連続ゴールで7連勝を記録するなど、激戦の3ブロックを勝ち抜く原動力となり、チームを優勝、3年ぶりの1部復帰に導いた。これまでのサッカーキャリア、3年間のブランクを経て臨んだ今季のリーグ戦を振り返ってもらった。
(※インタビューは2021年12月に実施)

INTERVIEW(2/3)

J2・水戸に入団も出場機会を得られず

──水戸の話が来た経緯は。

「代理人の方が話を持ってきてくれた。ちょうど水戸が選手を探していたので、代理人の方が僕を売り込んでくれて、プレーの映像などを見てもらって話がまとまった。僕自身は韓国にいたままで、特に練習などは参加せず、日本に行った時には移籍が決まっている状態だった」

──初めてJリーグのクラブに入団してみての感想は。

「技術的なところでいうと、足元などは本当にうまかった。そこは韓国よりもうまい選手が多い。ただ、試合をやればおそらく大邱FCの方が強いと思った。それと、当時の水戸はまだまだ環境面が整っていなかったので、そういった面は大邱の方が遥かにいいと感じた。大邱は割と資金のあるクラブだったので」

──韓国と日本におけるプロ選手のあり方に違いはあるか。

「ファンに対する考え方、食事の取り方、自分を律するというようなプロとしての行動などはほとんど変わらない。すごく似ている。逆にアルゼンチンの場合は試合前日にコーラなども飲むし、あまり気にしていない感じだった」

──水戸では約1年ほど在籍していながら公式戦の出場機会を得られず、途中で契約を解除して移籍をした。

「特別、自分が試合に出ている選手よりも劣っているとは思わなかったし、やれる自信もあった。ただ、チームの戦術と合わなかったのか、フィットしなかったのか、試合のメンバーには入れなかった。いくら時間が経ってもその状況は良くならなかったし、このまま試合に出られないのにこのクラブにいても仕方がないと思い移籍を模索した」

尹 英勝/ZION FC

尹 英勝/ZION FC

群馬でようやくJリーグ初出場

──その後、同じJ2のザスパクサツ群馬に移籍をしたが、それは向こうからオファーがあったのか。

「オファーはなかった。移籍をしたいということを代理人に伝えて、それで代理人が群馬のテストを用意してくれた。その時はすでに水戸とも契約を解除している状態だったので、そこで合格できなければまた次を探すことになった。でも、とにかく試合に出たいという気持ちが強くて契約を解除してテストを受けに行った。最終的には練習に参加して合格をもらった」

──ようやく群馬でJリーグデビューを迎えられた。

「うれしかった。Jリーグでデビューするまで1年半かかったので、やっとという気持ちだった。特に緊張することなく、むしろ対戦相手のファジアーノ岡山のサポーターが1万人くらい入っていたので、やってやろうという気持ちだった」

──それから数試合後に初ゴールを記録。

「デビューしてから2、3試合後だったと思うが、徳島戦で決めた。割と泥臭い感じで、ゴール前で相手DFの方が先にボールに追いついていたが、無理やり振った足が相手のクリアボールにうまくあたって入るみたいな感じだった」

──その時は現在エリースに在籍しているFW小牟田選手もチームメイトだった。

「自分が群馬に入団する前から彼はいて、得点を決めた徳島戦にも出ていた。前線でボールが収まるし、ものすごくやりやすい印象だった。彼がエリースでやっているというのは今年の8月くらいに知った。特別連絡を取り合ってはいないが、今度群馬で一緒だった時の選手の結婚式で会うと思う」

──初ゴールを決めたことで自分の立ち位置に変化は起きたか。

「結果を残せたことでメンタル的にも落ち着けたし、目標も次に切り替わった。それまでは途中出場ばかりだったが、得点を決めた2試合後には先発でも出れた。群馬というチームは自分にあっていたし、それに監督も信頼して使ってくれた。何よりやっていて楽しかった」

──最終的に群馬はどういった形で終了に。

「契約満了という形で終えた。シーズン途中にチームに入って約半年くらいプレーしたが、僕自身は外国人枠になるので、その助っ人という枠には残れなかった」

──その後は。

「海外なども含めて移籍先を探したが、なかなか決まらず、最終的には半年くらい経って関東リーグのVONDS市原に決まった。そこで半年ほどプレーをさせてもらい、最後はJFLの武蔵野に入団して引退した」

──最後は武蔵野に戻りたいという気持ちはあったか。

「当時はJ3を目指していたし、戻りたい気持ちはあった。ただ、VONDSに入った時から仕事をしながらサッカーという生活になり、武蔵野に入ってからは仕事も変わって更に忙しくなり、段々と夜の練習にもいけなくなった。それで最終的には仕事を取り、引退という形になった」

──最後に武蔵野で引退したときはやりきった感じはあったか。

「自分の中ではあった。小、中学校という一番伸びる時期を武蔵野で育ててもらって感謝しているし、また、そういったクラブでサッカーを終えられたことは良かったと思う」

PROFILE

尹 英勝 FW/ZION FC

1991年生まれ。東京都出身。在日韓国人3世。横河武蔵野FCジュニア、ジュニアユースを経て東京朝鮮高、朝鮮大学校へ進み、大学時にはアルゼンチンのCAインデペンディエンテのサテライトチームでもプレー。その後、韓国のKリーグに所属する大邱FCでプロデビューし、日本ではJ2の水戸、群馬でプレーしたのちに関東1部のVONDS市原、JFLの東京武蔵野シティFCに所属した。現在は仕事をメインにしながら東京2部のZION FCで10番を付けてプレーしている。決定力抜群のストライカーで今季14試合に出場し、そのうちの11試合で得点を挙げ、12勝2敗でチームを優勝に導いた。

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