TOKYO FOOTBALL STORY

TOKYO FOOTBALL STORY
尹 英勝/ZION FC(東京2部)

TOKYO FOOTBALL STORY 2021

尹 英勝/ZION FC

「自分の中では今も引退したまま」

2021年シーズンの東京2部で大活躍を見せたZION FCのFW尹英勝(ユン ヨンスン)。開幕から7試合連続ゴールで7連勝を記録するなど、激戦の3ブロックを勝ち抜く原動力となり、チームを優勝、3年ぶりの1部復帰に導いた。これまでのサッカーキャリア、3年間のブランクを経て臨んだ今季のリーグ戦を振り返ってもらった。
(※インタビューは2021年12月に実施)

INTERVIEW(3/3)

3年間のブランクを経て再びピッチへ

──武蔵野を退団してからはほとんど仕事だけの生活に。

「自分の中ではサッカーに一区切りつけたので、2018年からは仕事だけの生活になった。サッカーはたまにできればいいかなという感じで、時々知り合いが平日の午前中にやっているサッカーに顔を出したりもしたが、どこかのチームに入るということはなかった」

──それがなぜ2021年からZIONというクラブに入ってもう一度サッカーをやろうと思ったのか。

「もう一度というより『たまにサッカーができればいい』という、その延長のような感じで今もやっている。自分の中では引退したままだし、選手として本格的に復帰したという感じも、現役でやっているという感じもない。先ほど話した知り合いの方に強く誘ってもらったので、『練習や練習試合にはなかなか仕事もあって行けないが、それでもよければ』ということで入った」

尹 英勝/ZION FC

──実際にシーズンが始まり、試合を重ねるごとに気持ちの変化は。

「特別大きな気持ちの変化はなかったが、シーズン終盤に優勝したいという気持ちは強かった。自分のレベルを上げようとか、サッカーを頑張ろうということではなくて、チームを昇格させたいという気持ちが強かった」

──今季は開幕から7試合連続ゴールなど14試合のうち11試合で得点を決めた。3年間のブランクを経て再びピッチに立った感覚は。

「やはり実際の公式戦というのは楽しくて、いい緊張感の中でプレーができた。自分は他の選手に比べると走れないので、少なくとも得点を決めてチームに貢献しなくてはいけない。シュートに関しては今も自信があるし、いい感覚を保てているが、ドリブルで抜くタイミングなどは自分の描いているものとはだいぶかけ離れてしまっている」

仕事が最優先 サッカーは出来る範囲で

──結果的に優勝して1部昇格を果たした。

「シーズンの初めに同じ2部のREAL TOKYOと練習試合をして0-7で負けたので、優勝は正直難しいと思っていた。でもやっていくうちにもしかしたら優勝できるんじゃないかと思えるようになったし、自分としても少しずつ試合勘を取り戻せている感じがあった」

──ZIONの林代表は「今季のチームはヨンスンを生かすサッカーに徹した」と言っていた。

「僕に簡単にボールを当ててくれたり、僕のことを信頼して点を取らせようとしているのは感じた。だからこそ僕自身は点を取らなくてはいけないと思った。ただ、サッカー的には本来、もう少しボールを回して自分たちの時間を作ることも必要だったと思う。でもこのサッカーで勝利を挙げていたし、優勝を最優先に考えるのであれば、あえてそういったサッカーにチャレンジする必要はなかった。結果的に、リスクを負わないサッカーを最後まで貫いたというのは正解だったと思う」

──周りの選手の成長はどう感じた。

「自分が点を取れているのは周りの選手が頑張っているおかげだし、そこで何とか勝ちを重ねていくうちにチームもまとまり、成長を感じるようになった。負けている時でもサッカーはブレていなかったし、精神的に強くなったと思う」

──改めてZIONに入ってサッカーをやってみての感想は。

「ZIONで良かったなと思う。サッカー的にもそうだが、練習や練習試合になかなか行けない自分を代表の林さんが理解して受け入れてくれたし、仕事の方でも応援してくれた。おそらく他のチームだったら『もっと参加しろよ』と言われているところを理解してくれているのはすごく感謝している」

──最後に来季は1部で戦うことになるが意気込みは。

「1部のレベル自体がわからないので何とも言えないが、間違いなく2部よりかは高いはず。このままではチームとしても厳しいだろうし、自分自身も身体を作っていかなくてはいけない。でも、今まで以上の緊張感の中でまた試合ができるというのは楽しみのひとつになる。ただ、ここから自分は新しい事業をスタートするし、一番に考えなくていけないのは仕事。仕事を最優先に考えながら、その中で自分ができる範囲でコミットしていきたい。最低でも残留はしたいので、そこに向けて頑張りたい」

尹 英勝/ZION FC

PROFILE

尹 英勝 FW/ZION FC

1991年生まれ。東京都出身。在日韓国人3世。横河武蔵野FCジュニア、ジュニアユースを経て東京朝鮮高、朝鮮大学校へ進み、大学時にはアルゼンチンのCAインデペンディエンテのサテライトチームでもプレー。その後、韓国のKリーグに所属する大邱FCでプロデビューし、日本ではJ2の水戸、群馬でプレーしたのちに関東1部のVONDS市原、JFLの東京武蔵野シティFCに所属した。現在は仕事をメインにしながら東京2部のZION FCで10番を付けてプレーしている。決定力抜群のストライカーで今季14試合に出場し、そのうちの11試合で得点を挙げ、12勝2敗でチームを優勝に導いた。

PAGE BACK

PAGE TOP